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第1巻1号(2018年5月発行)

  • 核兵器禁止条約
  • 日本と核兵器禁止条約:歴史、地理、合法性、道徳性、人道性からみた誤った選択

    ラメシュ・タクール

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    要約

     日本は、核兵器禁止条約の署名を拒否することによって、歴史、地理、合法性、道徳性、人道性の面からみて、歴史の誤った側に立っている。同条約は、核兵器とその使用を制限し廃絶する、1945年以来の広範な歴史的進歩の一環である。その規範的な仕組みには、核不拡散条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)、原子力供給グループ、地域的な非核兵器地帯、拡散に対する安全保障構想(PSI)、国際原子力機関(IAEA)といったものが含まれる。地理の面からみれば、グローバルな核のリスクや脅威がアジア太平洋においてとりわけ先鋭な形で存在しているが、この地域のほとんどの国々が禁止条約に賛成している。核兵器を廃絶するというNPT上の法的義務は1996年の国際司法裁判所の勧告的意見によって強化された。世界のほとんどの国々と人々が、核兵器はきわめて不道徳的なものであるとして忌み嫌っている。禁止条約は、それらの集団的な道徳的反感を表現したものであり、人道主義的な原則に根差したものなのである。

  • 核兵器に悪の烙印を押し、非正統化する

    黒澤満

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    要約

    核兵器禁止条約が2017年9月20日に署名開放されたが、同条約は核兵器に「悪の烙印を押す」ことを目的にしていると言われる。しかし、核兵器国や核の傘の下にある国々が条約に反対しているのに、いかにして核兵器に「悪の烙印」を押しうるのであろうか? 本論文では、その背景を分析することによって、さらには、同条約の主目的の一つが核兵器に「悪の烙印」を押すことにあると示すことによって、核兵器禁止条約の意義を明らかにする。次に、核兵器に「悪の烙印」を押すという考え方を、「非正統化」概念と比較検討する。本論文では、両アプローチは「核兵器なき世界」を求める点で共通しているが、その理由づけや方法、安全保障に関するとらえ方がそれぞれに異なっていると論じる。両アプローチは非核世界を達成するうえで互いに補完関係に立ちうる。したがって、関係者は、それぞれのアプローチを同時並行的に追求して、両者の提案が「核兵器なき世界」の追求において補完しあうようにすべきである。

  • 核軍縮に向けた戦略的計画:完璧なる政治的嵐をつくり出す

    ランディ・ライデル

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    要約

    核戦力の廃絶において進展が見られない中、核兵器を禁止する条約への支持が人道的な理由から高まっている。著者は、核軍縮におけるこの2つの対照的な流れを検討する。このいずれの傾向も「政治的意志」によって導かれている。著者は、この用語が国連総会やNPTの審議においてどのように使われているのかを検討している。著者は、①草の根、②諸国の連合、③核兵器国、④国連における共通の中心的フォーラムという4つのレベルにおける集合的行動の重要性を強調する。この政治的意志を維持するために、これらのレベルすべてを覆う「戦略的計画」が必要であると著者は論じる。この中核は、核弾頭や爆弾、運搬手段を実際に削減し破壊することを含んだ行動から成り立っているが、これらは、透明性、検証性、不可逆性、普遍的な参加、法的拘束性を目的とした意味のある管理とともになされるものだ。それを持続するには、政治的意志の4つの次元全てからの圧力から成る「完璧なる嵐」を生み出すような、政治的力の混わりを必要とすることだろう。著者は、軍縮への見通しは、理想と自己利益の双方に依って開けると強調する。本論文は、軍縮に対してよくある批判にいかに対抗するかについての見解を示し、軍縮を前進させる10項目の実践的な取り組みについて論じる。著者は、国連や禁止条約交渉、NPT再検討会議、国際機関関係者による公式発言からの一次資料を利用している。

  • 赤十字国際委員会(ICRC)と赤十字・赤新月運動:1945年以降の非核世界を目指す活動について

    リン・シュレーダー

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    要約

    この論文は、国際赤十字委員会(ICRC)と国際赤十字・赤新月運動全体が、広島での70年以上前の初めての原爆使用以来、なぜ、そしていかにして核兵器なき世界に向けた世界的な取り組みに貢献してきたのかを検討するものである。原爆投下は、国際人道法の原則と規則は核兵器にも適用されることを想起させ、その使用が人間に引き起こす帰結に光を当てるものであった。こうした関心のありようが「人道イニシアチブ」の中核にあったものであり、これが2017年7月の核兵器禁止条約の採択に大きく寄与することになった。筆者は、核兵器が完全に廃絶される以前であっても、既存の公約と義務をベースにして、軍事計画やドクトリン、政策における核兵器の意義を再検討し、核爆発のリスクを低減するさらなる努力がなされるべきであるし、また、なしうるとのICRCの見解に同意する。本論文は、そのことを念頭に、核兵器禁止条約に関しては、今日も継続する武力紛争の犠牲者を保護するためにもっとも必要とされていることは、国際人道法の既存の一般的規則と原則のさらなる尊重と遵守であると結論づける。

  • 国境を超える市民社会はいかにして核兵器禁止条約を実現したか:ベアトリス・フィン氏へのインタビュー

    目加田説子

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    要約

    核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、2017年のノーベル平和賞を受賞した。ICANは100カ国以上に基盤を持つ非政府組織のグローバルな連合体であり、核兵器禁止条約を推進したことで知られている。ベアトリス・フィン氏は2014年以来、ICANの事務局長を務める。ノーベル平和賞の受賞スピーチでフィン氏は、「私たちはともに、軍縮の世界に民主主義を持ち込み、国際法を作りかえつつある」と述べた。このインタビューは2018年1月14日、同氏の来崎に際して、中央大学の目加田説子教授によって行われた。フィン氏はインタビューの中で、国境を超える市民社会の役割や、軍縮プロセスにおける民主化の意義について論じている。

  • 核軍縮と核兵器禁止条約:中満泉・国連軍縮担当上級代表へのインタビュー

    吉田文彦

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    要約

    中満泉氏は国連事務次長、兼、国連軍縮担当上級代表である。2017年5月1日に同職に就任し、同年9月20日に署名に開放された核兵器禁止条約の協議プロセスを支援した。中満氏はかつて、国連開発計画(UNDP)危機対応局長、難民・移民の動きに関するサミットをフォローアップする国連事務総長の特別顧問、国連平和維持活動局アジア・中東部長を務めた。同氏は国連のキャリアの中で、さまざまな観点から国際の平和と安全の問題に取り組んできたことになる。現在、国連の軍縮部門のトップである中満氏は、長崎でのスピーチで次のように強調した。「軍事能力の継続的強化と、武力紛争の性格を考えると、核軍縮に関して今行動を取らなければ、現状を維持することにもならない。核軍縮に関して行動を取らなければ、世界はより危険でより不安定な場所になる」。このインタビューで中満氏は、核兵器禁止条約に関する見解に加え、核軍縮を含めたグローバルな軍縮に関する将来のビジョンや課題について語っている。インタビューは、RECNAの吉田文彦教授が行った。

  • 抑止と核兵器先制不使用
  • 核兵器の先制不使用と信頼性のある抑止力

    スティーブ・フェター、ジョン・ウォルフサール

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    要約

    最大の核保有国における核兵器数減少の点では進展が見られるものの、一部の国が、抑止目的だけではなく、強制や戦争遂行のために核兵器への依存を強めようとしている。核兵器がこうした役割のために効果的あるいは適しているとみなせる証拠には乏しく、抑止以上の目的で核兵器に依存するリスクは適切に評価されていない。著者は、米核戦力の進化を振り返り、核兵器先制不使用政策の確立に見通しがあるどうかを評価している。先制不使用政策は、米国あるいはその同盟国に対する核攻撃の抑止力を減ずることは決してない。核兵器は非核攻撃に対する抑止力としては効果的でない。なぜなら、米国あるいはその同盟国に対する非核攻撃への対応として核兵器を先に使用するとの米国の脅しが信頼性を持つようなシナリオはほとんどないからだ。核兵器先制不使用政策を採択することの利点としては、核の偶発的エスカレーションや計算違いによる核使用のリスクの減少や、不拡散・軍縮の取り組みへのプラス効果を挙げることができる。

  • 中国の核兵器先制不使用政策

    潘振強[パン・ツゥンチャン]

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    要約

    中国の核兵器先制不使用政策が意味するものは、他国による核攻撃を抑止する目的でのみ、核兵器を保有するということである。中国は、その核戦略の性格は純粋に自衛的なものであると表明している。中国の核兵器先制不使用政策は、同国が外部からの核の脅威に対応するのに適切な穏健な核能力を確立し、微妙な戦略的バランスを維持することに寄与している。この政策はまた、とりわけアジア太平洋地域における戦略的安定にも貢献している。より根本的に言えば、この政策は、国際的な核軍縮に向けた実行可能な道筋を示してきた。中国は、近い将来においても核兵器先制不使用の誓約を守り続けることになるとみられるが、その政策の運命は、概して、激化する米中競争という文脈の下での両国関係の深化にかかっている。核兵器の役割をめぐる中国の非核兵器国との深刻な対立もまた、その先制不使用政策に重大な影響をもたらすかもしれない。究極的には、中国にとっての真の問題は、21世紀における先制不使用政策の限界を認識する戦略的ビジョンと政治的勇気をもつことができるか、この制約の先に踏み出すことができるか、いかなる大国の軍事戦略においても核兵器の役割を低減・廃止する世界の取り組みを主導してすべての核兵器の完全禁止と徹底的な廃棄への道を切り開けるか、という点にあるのである。

  • 核兵器の先制不使用:日本における深い分断をどう乗り越えるか

    阿部信泰

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    要約

    日本では、核軍縮と核兵器の先制不使用政策に対する強い支持がある。核軍縮・不拡散を推進し、偶発的あるいは計算違いによる核戦争の開始を予防するうえで、先制不使用政策に利点があることは明らかだ。しかし、日本政府は、民主党政権の短い一時期を除いて、米国に対して核先制不使用政策を採用しないよう求めてきた。米国では核兵器に対する依存が実際のところ低下しているにも関わらず、現実主義者は依然として核抑止や先制使用政策の維持にこだわっている。国際人道法上の原則を厳格に適用すれば、核兵器を使用しうる場合はさらに制限される。核兵器の肯定派と否定派との間の深い分断を乗り越えて、米国による核先制不使用政策を日本が支持できるようにしなくてはならない。ここに、この分断を架橋する方法を追求する必要性が生じる。この目的のために、先制不使用の肯定派と否定派との間の分断について、この地域における現在の軍事・安全保障環境を基礎として詳細に分析せねばならない。

  • インドと核兵器の先制不使用政策

    クマール・サンダラム、M・V・ラマナ

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    要約

    インド公式の核政策の要の一つは核兵器の先制不使用政策であり、インドでの核をめぐる論議において長い歴史を持っている。2003年1月に出されたインドの明文上の政策には、核兵器を先制使用しないとの誓約が含まれているが、インド軍が生物兵器あるいは化学兵器で攻撃された場合には核兵器を使用しうるとの重大な但し書きがついている。インドの外交官や政府報道官、戦略家らは、先制不使用政策を、責任ある核大国としてのインドの地位を示すものだとして、称揚してきた。同時に、戦略家や軍指導部、最近では政府関係者が、先制不使用の誓約に疑問を呈するか、あるいは、その放棄を呼びかけてきた経緯もある。さまざまな政策決定者や政府関係者の発言を見ると、核兵器の使用に至る状況に関する彼らの理解は、核先制不使用政策の厳密な解釈には見合っておらず、インドが軍事的危機にあたって先んじて核攻撃を行う可能性を示唆している。ミサイルに搭載できる核弾頭の開発・配備は、核兵器先制使用の物質的基盤を提供し、事故的あるいは偶発的な核戦争のリスクを生み出すであろう。

  • その他
  • イラン核合意を基礎に国際の安全と平和へ

    サイード・ホセイン・モサビアン、モハマド・メフディ・モサビアン

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    要約

    およそ20カ月にわたる集中的な協議の後に、イランと世界の6カ国(ドイツ・フランス・英国・ロシア・中国・米国)が2015年7月、イランをめぐる核の行き詰まりを打開する「共同包括的行動計画」(JCPOA)に合意した。この合意は、イランの核分裂性物質が兵器目的に転用されないように検証可能な保証を与え、これまで協議された中で最もレベルの高い核の透明化措置と査察を提供し、イランに対する米国と国連の核関連制裁を停止するものである。国際社会はこの合意を歓迎し、国連安保理決議によって承認された。
    この論文は、イランと世界の大国を合意に至らせた主要因について検討するものである。その要因とは、主要な交渉材料(イランにとっては兵器化までの短い時間、米国にとっては制裁措置)を利用しようとの双方の意志や、両国における政権交代、変化する地政学的な文脈である。しかし、最も重要なのは、米国のイランに対する要求が、ウラン濃縮を一切認めない立場から核兵器開発を認めないとの立場に変わったことにある。JCPOAは、これらグローバル大国やイランにとって大きな意味合いを持ち、とりわけ、米イラン二国間関係や地域の安全保障環境、米国の国内政治に影響を与えている。

  • ねじれる日本の核政策:米国の傘の下での二面性と一貫性

    太田昌克

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    要約

    日本は、「非核三原則」という反核兵器的な政策を宣言しているにも関わらず、60年以上にわたって、米国の提供する核の傘の保護を享受してきた。この二国間の核取り決めは、著者が「日米核同盟」と名付ける両国間の強力な紐帯を確立し育てあげてきた。米核戦力の裏付けをもったこの独特な政治・軍事的同盟は、核兵器に関連する日本の安全保障政策に「概念的ねじれ」をもたらしてきた。このねじれは、「二面性」および「一貫性」という二つの要素でもって分析することができる。ねじれは、核兵器使用が人間に与えた帰結に関する日本の空前絶後の経験や、日本の反核感情、米国の冷戦戦略に枠づけられた日本の安全保障政策言説、日本政府による米国の核の傘の容認といった、いくつかの要因の結果である。これらの要因は、現在の安倍政権も含め、日本の歴代の保守政権に対して、日本の安全保障政策を特徴づける二面性と一貫性に由来する「核の歌舞伎」を演ずることを強いてきた。核兵器の先制不使用政策への安倍政権の反対や、新たに採択された核兵器禁止条約に対する日本の厳密なアプローチは、核兵器とそれに関連した安全保障問題に対する日本の二面性と一貫性に緊密に関係したものである。

  • 会議レポート
  • 北東アジアの平和と安全保障に関するパネル(PSNA)2017年報告

    鈴木達治郎

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    要約

    長崎大学核兵器廃絶センターは2015年3月、「北東アジア非核兵器地帯設立への包括的アプローチ」と題する報告書を発表した。それ以降、RECNAでは、同報告書での勧告のフォローアップとなる活動を組織してきた。その一つの成果が、2016年11月の「北東アジアの平和と安全保障に関するパネル」(PSNA)の設置である。PSNAは「タイムリーな政策的勧告と公的な関与を通じた政治プロセス」を促進し、「北東アジア地域における平和と安全の確立の一環としての北東アジア非核兵器地帯の創設」をめざすものである。パネルは、8カ国(オーストラリア・中国・ドイツ・日本・モンゴル・韓国・英国・米国)の17人から成っており、モートン・ハルペリン、マイケル・ハメル=グリーン、文正仁、梅林宏道の4人の共同議長が運営する。PSNAは2017年6月24・25両日にモンゴルのウランバートルで第2回会合を開いた。本報告は、(1)第2回PSNA会合の討論の要約、(2)共同議長からのコメント、(3)討論の要約に関する分析のアップデート、から成る。本報告の内容はPSNAの活動を基盤とするが、まとめに関しては筆者のみが責任を負う。