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第2巻2号(2019年12月発行)

  • 核兵器禁止条約:発効の先を見すえて
  • 目的にかなった制度構築:核兵器禁止条約の履行・検証の充実に向けた進歩的戦略

    タマラ・パットン、セバスチャン・フィリペ、ジア・ミアン

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    要約

     核兵器禁止条約は、核兵器プログラムの不可逆的な廃棄について交渉し、のちにそれを検証する「権限のある国際当局」を指定することを加盟国に義務づけている。こうした当局が任務を遂行するにあたって目的にかなったものであるようにすることが、条約の将来的な履行と正統性確保のために決定的に重要となっている。
     本稿は、この問題に対処するため、条約を制度化する手始めとして、「履行支援ユニット」と専門の「科学技術諮問機関」から成る二部門の組織構造を早期に構築することを提案する。こうすることで、核兵器保有国が条約参加を決定した場合に、検証という目標を達成する技術的基盤が作られることになる。
     次に本稿は、こうした二部門の構造をスケールアップして、事例ごとに任命される査察官の活動を調整する任務を与えられた常設の国際機関に関する構想を論じる。これはまた、国際原子力機関のような既存の核検証機関の活動に協力し、それを補完するものでもある。制度構築に関するこうした革新的で適応的な戦略によって、核軍縮に向けた新たな複合的レジームの登場を支援して核兵器禁止条約を効果的なものにできるし、加盟国が条約発効当初に抱える資金・技術面でのリソース不足に対処することもできる。

  • 核兵器禁止条約における核兵器廃棄期限について

    モリッツ・キュット、ジア・ミアン

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    要約

     核兵器禁止条約は、条約に加盟する核保有国に対して、「核兵器あるいはその他の核爆発装置」を保有する一方で、それらを「最初の加盟国会合が決定する期限に遅れないように、できるだけ速やかに廃棄すること」を義務づけている。
     本稿は、この期限の決定に関して考慮に入れるべき技術的問題について検討を加えるものである。この義務を果たすという目的に関連して、核兵器の解体と廃棄にからむプロセスと諸問題を本稿ではまずは概観する。核兵器備蓄の規模と深化、および、弾頭解体に関する申告上および推定上のペースに関する公的に利用可能な情報を利用しながら、すでに解体が予定されている兵器をはじめとした、既存の備蓄核兵器の解体と廃棄にかかるであろう時間を推測する。最大の核戦力をもつ米国とロシアに焦点を当てるが、他の核兵器国についても扱う。本稿の知見によれば、核兵器禁止条約では核兵器廃棄に10年の期限(10年間の延長の可能性あり)を設けるべきことが示唆される。

  • その他
  • 核軍備管理と核軍縮の重大な危機:現状と課題

    ゲーツ・ノイネック

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    要約

     軍備管理の黄金時代は終焉を告げ、米ロ両国は現在、軍備管理の協議を行っていない。画期的であった中距離核戦力(INF)全廃条約は2019年8月2日にすでに失効し、新戦略兵器削減条約(新START)は2021年2月に失効する。ロシアと西側との間の政治的対立にくわえ、新たな軍事技術の発達によって、戦略的安定性は損なわれることになろう。あらたな軍拡競争が起こり、世界の核軍縮、不拡散、地域の安定に重大な影響がもたらされる。しかし、どちらの超大国にも軍備管理や軍縮を進める方針はなく、逆に、冷戦期の戦略的戦力を更新し近代化する高価な政策を追求している。  核戦力をさらに削減し、長年にわたる軍備管理の取り決めを延長するためのより大胆なアプローチが求められている。INF全廃条約の崩壊は、条約遵守を検証する相互査察によって防ぐことができたかもしれない。米国とロシアは、新STARTを2026年まで延長し、戦略的安定性を高めるためになすべきことに関する構造協議を行うよう合意することができよう。こうしたモデルは、第三国の参加や、ミサイル防衛、精密誘導通常攻撃システム、宇宙空間とサイバー空間における今後の行動といった要素を考慮に入れなくてはならない。NATOとロシアは、いかにして危険な軍事行動のリスクを減じ、事故や計算違いによる軍事的エスカレーションを予防するかについての実質的な対話を始める必要がある。他の核保有国と他の種類の運搬手段を持つ国々も、この軍縮プロセスに加わらねばならない。

  • 巡航ミサイル規制:核軍備管理における当然の次のステップ?

    アンディ・ウェーバー、クリスチャン・パーサモア

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    要約

     重要な核軍備協定が失効し、ますます強化される核兵器近代化プログラムや複数の国々による拡張計画が存在するなか、世界は新たな核軍備競争のとば口に立っている。国際社会は、こうした軌跡を変え、軍備管理を再活性化するアイディアを求めている。本稿は、こうしたアイディアの一つ、すなわち、空・海・陸のいずれに配備されるものであれ、核兵器を搭載した巡航ミサイルを規制し廃絶することを提案するものである。多くの国々と非政府組織がこの数年間、こうした考えを発展させてきた。しばしば「巡航ミサイル規制」とよばれるこの考え方を展開してきた多くの人々にとって、魅力的かつ実現可能、多くの国々の相互利益になりうるものとみなされているのである。

  • オスロの「新方針」:ノルウェーの核軍縮外交、2005-2013

    ヒューブ・エゲランド

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    要約

     2017年7月に122の非核保有国が採択した核兵器禁止条約は、政府機関・国際機関・市民社会などの主体からなるトランスナショナルなネットワークが推進したものである。条約の発効が視野に入ってくる中、条約の歴史に関する議論が始まっている。条約の支持者らは、同条約の採択は、外交的な行き詰まりと、核爆発が人間にもたらす帰結に関する経験的な証拠の積み重ねに対する合理的な反応だと見る一方、修正主義的な見方によれば、人道主義的な観点からの条約推進は、実際には核兵器の禁止そのものを問題としているのではなく、西側の核大国を非難したい、あるいは、NPTの価値を貶めたいと考えるラディカルな勢力に乗っ取られた結果だという。核兵器禁止条約を、他のフォーラムにおいて軍縮が進展しないことに対する「憤懣」の表明とみる識者らは、同条約の採択は、非合理的な感情の爆発であるとみなしている。
     本稿で筆者は、2005年から2013年にかけてのノルウェーの核軍縮外交について検討する。上記の修正主義者の見方とは異なり、核兵器を禁止するあらたな法的枠組みを求める交渉を行うという目標は、2010年以降のノルウェーの中道左派連立政権の主要な目的となったと筆者は論じる。エリートに対する聞き取り、情報公開請求によって取得した外務省の内部文書、外交政策当局者の公的発言などを資料としながら、新たな法的枠組みの追求をはじめとする「人道主義的」な取り組みは、戦略的な社会構築に向けた、慎重に検討された政策の産物であると、筆者は主張する。

  • 広島・長崎への原爆投下が人間に与えた効果と核兵器時代終焉に向けた人類への教訓

    朝長万左男

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    要約

     広島・長崎への原爆投下から74年が経った。約21万人が死亡し、21万人が生き残った。生存者の健康障害は、次の3つの段階の後障害となって現れた。すなわち、初期には白血病(1949年ごろ)、中期には多くのタイプの癌が登場し、後期に入ると、幼年期被爆者に生涯を通じた癌が現れるだけではなく、老年被爆者の中に第二波の白血病が見られ、うつ病や心的外傷後ストレス障害といった心理的障害が現れた。このように、原爆が人間に与える効果には終わりがない。多くの人々が依然として放射線に起因する悪性の疾病によって死亡しているのである。したがって、原爆投下による死亡者総数を算出するのは時期尚早である。被爆者は、発病の恐怖におびえながら、みずからの生と家族の再生に向けた終わりなき闘いに直面している。被爆者は、人類の中で現実の核攻撃を経験した唯一の集団として、生涯をかけた核兵器廃絶の運動を続けている。とりわけ核兵器国の指導者らは、被爆者の英知に学び、人類を核戦争による絶滅の危機から救うべきであろう。

  • 「原爆の図」が可視化する暴力―命をめぐる想像力について

    岡村幸宣

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    要約

     水墨画家の丸木位里と油彩画家の丸木俊は、1945年8月に原爆投下直後の広島で惨状を目の当たりにして、1950年から共同制作《原爆の図》の連作を描きはじめた。連合国軍の占領下にあり、原爆被害の報道が禁じられていた当時、《原爆の図》は全国巡回展を行い、隠されていた核被害を伝える役割を担った。1953年からは、東アジアやヨーロッパを中心に10年ほどの間に約20か国で展覧会が開かれ、東西冷戦、米ソ両国の核開発競争の時代に核被害を世界に伝える先駆的な役割を果たした。こうした展覧会で多くの人と対話を繰り返すなかで、国境や民族を超えた視点を獲得していった丸木夫妻は、1970年代以後、加害と被害の交錯する戦争の複雑な実相を見つめ、公害や差別などの普遍的な暴力にも視野を広げて、新たな共同制作を展開していった。それらの絵画がもたらす強烈なイメージは、歴史の集合的記憶からは忘却されていく死者たちの記憶を伝え、私たちが常に命の問題をめぐる当事者であるという想像力を喚起させる。それらの非体験の「記憶」を受け止めることは、困難に満ちた世界を生き抜くための、私たちの重要な道標となる。

  • PSNAワーキングペーパー
  • 北朝鮮による核戦力放棄の検証:非核兵器国(とりわけ韓国)を検証措置に参加させることへの賛否について

    ジョン・カールソン

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    要約

     専門家や外交の世界では、軍縮の検証はできる限り多国間で行うのが望ましいというのが定説となっている。これは、国際原子力機関の保証措置体制の経験を反映したものでもあるが、軍縮プロセスの透明性と信頼性を増すために国際的な参加が必要だとの非核兵器国の見方を反映したものでもある。こうした見方に対する有力な反論は、機微な情報が拡散してしまうリスクを懸念したものだ。しかし、軍縮検証のいくつかの側面は、機微な情報を含まないものであり、そうした情報を含む場合であっても、情報を保護しつつ効果的な検証を可能にする手段は存在する。朝鮮民主主義人民共和国の核戦力放棄の進め方、検証の仕方についてはまだ細かい協議はなされていない。しかし、どのような協議がなされるにせよ、国際社会は、検証プロセスが公正であることを望むであろう。とりわけ韓国は、非武装地帯の向こう側で何がなされるかに直接の関心を持ち、この軍縮プロセスに関与したいとの強い希望を持っている。本論文は、不拡散の原則に抵触しない形で、これがいかにして可能かを検討したものである。

  • 北朝鮮のウラン生産量推定精緻化の方法について

    デイビッド・F・フォンヒッペル

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    要約

     本稿は、以下のことを目的とする。①北朝鮮のウラン採鉱に関する既知の事項のまとめ、②同国のウラン生産をめぐる主たる不確実要素の検討、③北朝鮮以外の国の核部門活動の推定に利用されているような、北朝鮮のウランと加工核物質生産量の推定幅を狭めるために役立つかもしれない主要な手法の指摘、④北朝鮮以外の国々による濃縮ウラン・プルトニウム生産量推定のまとめ、⑤核兵器実験に使用され輸出された核分裂性物質の量に関する既存の推定の紹介、⑥これまでに累積してきたウラン生産と核分裂性物質在庫をめぐる不確実性を減じるうえで、リモートセンシング技術と北朝鮮における実験がもたらしうる影響の検討、⑦不確実性を減じるアプローチを採ることの結果として、北朝鮮との協議において何を主要な目標とすべきかについての結論の提示。

  • インタビュー
  • 核軍縮のゆきづまりを乗り越える:トーマス・カントリーマンへのインタビュー

    黒川朋子

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    要約

     トーマス・カントリーマン氏は35年にわたって米国の外交官として務め、2017年1月に引退された。2011年9月から2017年1月にかけては、国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)の職にあった(2016年10月以降は国務次官代理も兼務)。同氏は、オバマ政権の核不拡散政策の形成における主要人物である。2017年10月以降は、米「軍備管理協会」理事長を務めている。
     本インタビューで同氏は、トランプ政権の核政策について批判的に検討し、代替案を提示している。たとえば、中距離核戦略(INF)全廃条約の失効に対しては、北大西洋条約機構(NATO)と欧州の非NATO諸国が「ミサイル配備の急激なエスカレーションのリスクを減じる」ための新たな政策的イニシアチブを追求すべきだと主張した。なぜなら、これらの国々はロシアの新型中距離ミサイルの標的になりかねないからである。インタビューは、2018年8月1日の第1回と2019年8月29日の第2回の2度に分けて行われた。編集、脚注作成などの責任は、Journal for Peace and Nuclear Disarmament にある。

  • 2019年の核問題をめぐる状況:カーネギー国際核政策会議で専門家らに聞く

    吉田文彦・鈴木達治郎

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    要約

     長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)は、カーネギー国際核政策会議が2019年3月11・12両日に開かれたのに合わせて、核問題の専門家に対してインタビューを行った。本記事は、吉田文彦と鈴木達治郎の2人が中国・ドイツ・ロシア・米国の5人の専門家に対して行ったインタビューを編集したものである。ジョージ・パーコビッチ博士(米国)は、最近の核情勢について全体的な見取り図を示す。イゴール・イワノフ大使(ロシア)は、米ロ関係の悪化についてコメントする。ハラルド・ミュラー博士(ドイツ)は、INF条約後の世界と核兵器禁止条約について見解を示す。リー・ビン博士(中国)は、中距離ミサイル開発とミサイル防衛に関する中国の態度について説明する。最後に、ジェフリー・ルイス(米国)は、北朝鮮の核開発と非核化の見通しについて意見を述べる。