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第3巻1号(2020年6月発行)

  • 論文
  • インド核戦力の指揮・管制

    ローレン・ボルジャ、M・V・ラマナ

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    要約

     インドの核戦力に指揮・管制を確立するという難題について長らく議論がなされてきたが、そうしたシステムの構造と組織について公に利用可能な情報はほとんどない。インドの核ドクトリン草案(1999年)で効果的な指揮・管制の目的について提示され、2003年には新しい核戦力を管理する組織の一部について公的な発表がなされた。それから約20年が経ち、核戦力の構造には多くの変化があった。本稿は、これらの進展について述べたうえで、核兵器の管制に関する共通性と差異について、インドと、それに先行して核開発に成功した国々との間の比較を行う。とりわけ検討の対象とするのは、核兵器の指揮・管制にとって重要であり、この20年ほどで開発されてきた軍事指揮所や衛星、運搬手段といった関連インフラと能力である。本稿はまた、インド核兵器の指揮・管制に関連して長らく問題になっている点、たとえば、通常兵器や民生用インフラと核システムの混同(entanglement)の問題などについても明らかにする。

  • グテーレス国連事務総長の軍縮アジェンダ:兵器規制のグローバルレジーム構築に向けて

    ランディ・ライデル

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    要約

     2018年5月24日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長はジュネーブ大学での演説で「軍縮アジェンダ」を発表した。国連軍縮局も同時に、同アジェンダの詳細を記した文書を発表している。2018年10月にはさらに同局が、アジェンダの実行計画を出している。本稿は、これらにおける主要テーマと、この軍縮イニチアチブの実行に向けた具体的な提案について紹介したうえで、過去の国連事務総長による提案との異同について検討する。また、アジェンダが与えた初期の影響、直面する障害、進展に向けた将来の見通しについても議論する。最後に、国連と国連事務局、事務総長が軍縮をグローバルに推進する上でどのような役割を果たしうるかについて検討を加える。

  • 権力と核兵器:欧州連合を事例に

    トム・ザウアー

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    要約

     欧州連合にとって核兵器はタブーである。しかし、EUが防衛統合を進めるにつれて、フランスの核戦力が議論の俎上に上る日は近づいている。本稿はその論議を明確にすることをめざす。本稿の前半では、核兵器は強力で、正当な防衛インフラであると考える人々と、核兵器はあまりに強力でありしたがって正当化できないと見なす人々との間の論議について概観する。
     後半では、この論議を、EUにおける米国以外の核兵器の将来的な役割に関する論議に適用する。フランスの核戦力がさらに「欧州化」される可能性はあるのか? あるいは、(ラテンアメリカや太平洋、アフリカと同じく)欧州自身がもうひとつの非核兵器地帯になるのか? それともほとんど変化は起きないのか? この政治的論議の帰結は概して、核兵器のパワーと正当性をめぐる一般的な論議の影響を受けると本稿では考える。

  • 核燃サイクルと拡散の「危険ゾーン」

    スティーブン・ハーツォグ

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    要約

     水平的核拡散は、時として「N番目国問題」などと呼ばれたり、次に核兵器を取得する国はどこかといったことが取りざたされたりする。核燃料サイクル技術は、原子力発電と兵器開発の両方に資する可能性がある。結果として、民生用の原子力計画は疑念の目で見られることになり、潜在的な核能力と拡散の技術的インプットをめぐる研究が、こうした論議にさらに微妙なニュアンスを与えることになる。
     こうした論議に貢献するために、本稿では単純な理論的命題を証明してみたい。すなわち、民生用核インフラを構築し、核燃サイクルを実現する中で、各国は核拡散の「危険ゾーン」を通過するという命題である。核燃サイクル能力があり、ある一定のしきいの下にある国々では、拡散をおそらく引き起こすことができない。拡散を起こさずに「危険ゾーン」を通過した国々は、将来にわたっても拡散の可能性が低い。筆者はこの命題を、「核燃料サイクル指標」を用いた予備的分析によって証明する。この指標は、民生用原子力開発と核兵器拡散との間のつながりを政治的に評価するための、ひとつのあらたな発見的ツールである。現在のイラン・サウジアラビア・日本・韓国に関する政治的意味合いについても議論を行う。まとめていうならば、本稿は、政治の意思決定者に対しては、歴史的事例からよく学ぶように、学者に対しては、より洗練された形で核燃サイクルの問題に取り組むように求めるものである。

  • 核不拡散条約と核兵器禁止条約の関係にについて

    トーマス・ハイノツィ

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    要約

     核兵器禁止条約の策定にあたっては、核不拡散条約(NPT)との整合性を保つように細心の注意が払われた。その目標は達成された。核兵器禁止条約は、この目的を達成するためのさらなる法的規範を常に予定していたNPTを強化し、支持するものである。NPTのその他の柱と同じく、軍縮の柱(すなわち「核兵器なき世界」)の目標は、さらなる法的枠組みの存在なしには実行できない。NPT第6条の完全履行に向けては、核兵器を禁止する法的拘束力ある規範の創設が不可欠である。2017年7月7日に採択された核兵器禁止条約は、そうした法的枠組みをもたらしたのである。

  • 軍備管理を超えて:核兵器を削減し安全・安定を増大させる新パラダイムとしての「協調的核兵器削減」

    ウィリアム・ムーン

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    要約

     軍備管理条約によって、この数十年、核兵器が抑制・制限されてきた。しかし、その条項や制限は柔軟性に欠け、往々にして特定のシステムや国に限定されており、交渉は困難で時間のかかるものであった。今こそ核兵器国は、より永続的で拡張可能なフォーマットで、核兵器削減の誘因になり、同時に安全・安定をもたらすこともできる新パラダイムを考えるべき時だ。米ロ間の「協調的脅威削減」(CTR)プログラムという従来からの核保安協力の取り組みでは、核弾頭に関するデータを共有し、アクセスも認められてきた。米ロ両国が開始し、後に5つの公式の核兵器国に拡張可能な新たな協力枠組みの下では、核兵器を削減し安全と安定を増大させることの引き換えとして核兵器近代化を認めるような新たなパラダイムが考えられよう。核兵器国は、問題が発生したり新技術が登場したりするたびに結ばれる新たな「契約」を通じてこのトレードオフの形式を協議し実行に移す永続的な場を創設すべきだ。安全・安定のための措置が強化されるにつれ、核兵器国は、継続的に核兵器を削減するインセンティブを得ることになろう。

  • 核戦争後のアカウンタビリティ:なぜ先に計画しないのか?

    ジョージ・パーコビッチ

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    要約

     もし核戦争が起こったら、非交戦国は、自らに与えられた被害に対処する際の支援の提供を求めて、攻撃国に責任を取ってもらいたいと望むことであろう。そうした被害は、放射性降下物であるかもしれないし、世界的な食料不足や難民危機を引き起こす気候変動の形をとるかもしれない。しかし、核使用を伴うかもしれない戦争の勝者になること(少なくとも敗者にならないこと)にばかり気を取られている国家や専門家らは、核兵器使用後のアカウンタビリティの問題をたいていは軽視している。核保有国は、責任感をもった、防衛的なアクターであろうとする。したがって、核戦争がすでに遂行された後に、その行為の是非を裁くプロセスを他者から要求されたり、非交戦国における被害者への補償や支援の提供を求められたりすれば、それを拒むことはできないであろう。そうしたアカウンタビリティを確立する国際的な努力が、攻撃と核兵器使用に対する抑止力を強化することになるかもしれない。

  • 世宗・RECNAワークショップ
  • 朝鮮半島の平和から北東アジア非核兵器地帯へ

    吉田文彦

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    要約

     2019年6月1・2両日、韓国の世宗研究所と長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)はワークショップ「朝鮮半島の平和から北東アジア非核兵器地帯へ」を共催した。本記事は、このワークショップを受けて出された政策提言の要約である。

  • 北東アジアにおける地域安全保障枠組みの実現性

    チョ・キョンファン

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    要約

     大国間の戦略的競争が再び起こっている北東アジアに地政学的な力の中心が移行しつつあるこの時代にあって、重大な困難があるにもかかわらず、北東アジアにおける協力の新たな機会が生まれている。旧来からの緊張や現在進行形の紛争、地域における覇権争いを乗り越えるために、地域の国々が発想や行動を変えることが必要だ。その意味において、平和的共存と相互の繁栄を促進する多国間協力の形をさぐることが好ましい。
     本稿は、多国間安全保障協力枠組みの構築への条件とそのバリエーションという観点から現状を検討することで、なぜ北東アジアにおいてはそうした枠組みが不在なのかを分析し、同地域にそうした枠組みを構築する能力があるのかどうか判断することを試みる。本稿は、韓国・日本・ロシアは多国間アプローチに好意的であるが、米国・中国・北朝鮮はそれほど熱心でないとみる。しかし、米中両国は、それぞれの経験、とりわけ北朝鮮問題の関連から、多国間安全保障協力の基盤を近年築いてきている。
     これに関連した問いは、関係国がいかにして協力を制度化できるのか、という問題である。本稿は、既存のリソースを利用できる既存の枠組みを基礎として、小さくはあるが焦点を絞った取り組みから始めることがもっとも望ましいアプローチであると結論づける。こうしたアイディアは、共通の安全保障問題を討議する地域サミットをまずは開催することで実現することができるであろう。

  • 朝鮮半島:抑止から協調的安全保障へ

    トビー・ダルトン

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    要約

     2018年の米朝シンガポールサミットは朝鮮半島に関する長年の紛争を解決に導く新しいモデルを導入した。すなわち、「永続的で安定的な平和体制」が「朝鮮半島の完全なる非核化」と同時に実現しうる、というものである。このモデルは、この地域における非核兵器地帯の創設にまで至る連続的な目標と段階を設定するものだ。これら目標の実現に向けた、軽視されてはいるが重大な障害は、南北朝鮮間の問題で抑止の役割を低減する必要性である。
     過程および目的としての「協調的安全保障」が、抑止からの脱却を導く有益な概念となるであろう。協調的安全保障を進展させるには、蓄積されてきた攻撃的能力の低減をめざす平和体制において、想定されたよりも大きな努力を必要とする。米中による促進を超えて、南北朝鮮は、通常戦力のバランスと態勢を変えるステップの実行に向けて相当の主体性をもつ。協調的安全保障は、紛争のエスカレーションに対する防火壁を設けることによって、朝鮮半島において自明とされている核抑止の意義を低減することができる。北朝鮮による小規模の「戦術的挑発」が、大規模戦争や、まして核兵器の使用につながったりするリスクを抑えることができるのである。南北朝鮮間の取り組みは、非核化と平和体制構築に関する複数の主体による作業に対して重要な意味を持つものであるが、大国の利益による制約を受けてもいる。さらに、協調的安全保障の追求は、南北朝鮮間の基本枠組みである半島統一という目標と基本的にぶつかるものであるため、とりわけ韓国政治において半島統一が引き続き強調された場合、目標への前進に向けた障害になるものと思われる。

  • PSNAワーキングペーパー
  • 停滞した北朝鮮非核協議をめぐる中国のジレンマ

    トン・ツァオ

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    要約

     北朝鮮の対米国・韓国協議が停滞する中、この行き詰まりを打開するために中国が果たしうる積極的な役割が大きくなってきている。しかし、北朝鮮が核開発に関してどのような行動に出るのかがわからない中で中国政府が対北朝鮮制裁の制裁解除に動けば、中国の意図に関する疑念が生まれるであろう。
     本稿はまず、非核化に対する北朝鮮のコミットメントに関する中国の見方を分析し、次に中国が自らの主要な利益を何と見定めているかを検討する。その利益観念が、非核化協議における目標とそれへのアプローチに関する中国の考え方に影響を与えるかもしれないからである。米中間の権力争いの激化は中国の利益計算を複雑なものにし、不拡散という長期的な目標と短期的な地政学的利益との間の緊張をもたらしている。
     本稿は、中国の政策の背後にある、互いに対立する圧力を指摘しつつも、この短期的目標と長期的目標との間にある政策的ギャップを乗り越え、停滞した非核化協議を前進させ、北朝鮮が挑発的な行動を再開する中で浮かび上がってきている危機をあらかじめ避けるべく他のプレイヤーと協力するために中国が取りうるステップについて提案する。

  • 善意で敷き詰められた道:トランプ政権の対北朝鮮核外交

    レオン・V・シガール

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    要約

     シンガポールで初めて行われた米朝首脳会議は、双方の主要な要求を満たす原則的な合意を生み出したが、ハノイでは合意に至らなかった。それ以来、北朝鮮は、交渉の席に戻る条件として、まずは北朝鮮への敵視をやめることを約束するよう米国に要求してきた。首脳会談の失敗後、北朝鮮政府内部の関与政策反対派が、交渉に反対して巻き返している。金正恩はこれに対して、2019年4月12日の最高人民会議への演説で、自身が容認できる米国からの提案に対して同年末までの期限を設定し、核兵器とその運搬手段である長距離ミサイルの実験に関する自主的モラトリアムを終了させる可能性を示唆した。その前段で金氏との会談を設定しようとの米国の努力に反して、金氏は他の種類のミサイル実験を強化し、核分裂性物質の生産を継続している。また金氏は、米国との協議前進に対するある種の人質として韓国との関係を保持している。しかし、金氏が、中国の興隆に対するひとつのリスクヘッジとして、彼の祖父と父親が追求したのと同じ目標、すなわち、米国・韓国との敵対関係の終了という目標を放棄することになるとは思われない。金氏の場合は、米国と韓国それぞれの大統領が前向きな姿勢を見せている点で、彼の祖先が置かれた環境とはちがっている。しかし、核の交渉力にますます頼る金氏の姿勢は、核実験の再開、あるいは、トランプ大統領が可能なレベル以上の要求をすることによって、自らを強制的外交に溺れさせる可能性がある。

  • 2018~19年の首脳会議プロセスと朝鮮半島非核化の見通し

    アントン・クロプコフ

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    要約

     朝鮮半島をめぐる対話が停滞し、米国の関心が今年末に行われる大統領選へと移る中、この地域における危機の解決に向けた大きな進展が今後数か月の間にもたらされる気配はない。こうした状況における原則は「マイナスになることはしない」である。すなわち、あらたな外交的取り組みへのさらなる障害となるようなエスカレーションを避けることに集中すべきだ。この状況では、朝鮮半島をめぐる外交協議再開に関して、多国間アプローチが最も有望のようだ。なぜなら、協議プロセスはより柔軟になり、成果はより持続可能になるからである。対話のありうる形としては、P3+3(中・ロ・米の安保理3常任理事国に北朝鮮・韓国・日本の3つの地域国家を加えたもの)がある。後者3カ国の中では、日本が、この枠組みの意義を十分見出しておらず、協議プロセスにおける積極的な役割を果たす用意ができていない。

  • 柔軟な「協調的脅威削減」の提案:北朝鮮の非核化に向けて、非政府の視点から

    ファン・ヨンス

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    要約

     北朝鮮は、「非核化」の正確な意味については依然として争いながらも、非核化に向けて取り組む意思を自発的に示している点で特異な存在である。北朝鮮の政治体制が今後も安定的であると予想されることから、その非核化プロセス全体は、ソ連崩壊後の流れとは異なったものになるだろう。北朝鮮非核化は難しい問題であるが、国際社会が北東アジア諸国と協力して取り組まねばならない問題である。現在、多くの政治的・財政的・技術的問題がある。本稿では、これらの問題についてまとめた後、エネルギーや施設の管理、それに関連したインフラ更新などの実践的な取り組みを提案する。

  • インタビュー
  • ミハイル・ゴルバチョフ氏インタビュー:「核兵器なき世界」に向けて希望を捨てるな

    副島英樹、喜田尚

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    要約

     『朝日新聞』が行ったソ連の元指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏に対するインタビューの転載。冷戦終結に向けた最後の日々における米国との対話・交渉について振り返る。当時の米ソのイニシアチブによって生みだされた「平和の配当」は近年の米ロ軍拡競争の再興によって失われつつあるが、ゴルバチョフ氏は、核戦争やチェルノブイリ原発事故の恐怖などから「核兵器なき世界」の重要性を実感したと語り、道義的な世界の構築を訴えている。

  • 書評
  • ジョセフ・カミレーリ、マイケル・ハメル=グリーン、吉田文彦編『2017年核兵器禁止条約――核軍縮への新しい道』(Routledge、2019年)

    山田寿則

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  • フランク・フォンヒッペル、田窪雅文、カン・ユンミン『プルトニウム――夢の核物質はなぜ悪夢に変わったのか』(シュプリンガー・ネイチャー、2019年)

    シャロン・スクワッソーニ

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