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第4巻1号(2021年6月発行)

  • 核兵器禁止条約発効:条約をどう履行するか
  • 特集序文

    ジョン・ボリー

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    要約

     2017年の核兵器禁止条約(TPNW)は重大な国際的達成ではあるが、核保有国やその一部の同盟国からの反対を招いた。これらの国々が安全保障のために依存している核兵器からの移行を促すことが意図されているからだ。TPNWが発効した今、条約の条項をいかに履行し、条約の全体的な目標に貢献する持続可能で多国間のレジームをいかに構築するかということに関連して、条約の利害関係者たちは多種多様な実践的課題に直面している。筆者は、本特集のゲストエディターとして、TPNWが生起した文脈について説明し、一部の主要なTPNW関連の論議を含めた、この新レジームの様々な側面に関して書かれた文献を紹介する。本稿はさらに、本特集のその他の論文が特集のなかでいかなる位置づけを持っているか、互いにどう関連しているかについて説明する。国別履行や、今後TPNWに加盟を希望する核保有国による条約の履行、条約の普遍化、持続可能な条約管理の文化の構築といった問題がそこでは扱われる。また、学者、赤十字・赤新月運動の専門家、市民社会の活動家がコメンタリーを執筆している。

  • 核兵器禁止条約を動かす:効果的な国内的履行への要素

    ジェイムズ・レヴィル、レナータ・ヘスマン・ダラクア、ウィルフレッド・ワン

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    要約

     過去において各国は、大量破壊兵器関連の条約を履行するのに必要な努力を軽視してきた。それでもなお、各国が実効的に条約を履行すれば、合意を維持し、これらの条約体制を遵守していることへの信頼を構築する前提条件になる。他の軍備管理・軍縮関連協定の経験を引きつつ、本稿は、核兵器禁止条約の第5条に規定された各国別履行に向けた最も意義のある措置について説明する。また、条約第2条における初期の宣言、第6条(被害者支援・環境回復)、第7条(国際協力・支援)を含め、各国別履行という観点を通じて、核禁条約におけるその他の義務についても検討する。本論文は、核禁条約の締約国が、この条約を国際協定から国家レベルに落とし込んでいく際にどのような要素を処理しなくてはならないのかについて着目したものである。すなわち、標準化、能力と資源、国際支援といった問題である。このことを通じて本稿は、各国のアクターや国際的なアクターを条約履行の取り組みにおいて支援することをめざしている。

  • 核兵器禁止条約における「加盟後核廃棄」オプションをめぐる実践的課題

    パベル・ポドヴィグ

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    要約

     核兵器禁止条約は、条約に加盟する核保有国に2つのオプションを与えている。ひとつは、核兵器と核兵器計画を廃棄した後に加盟する道である。もうひとつは、核兵器を保有したまま条約に加盟する道である。この場合、他の加盟国が承認した時限付き計画にしたがって核兵器を廃棄していかねばならない。「加盟後核廃棄」と呼ばれるこのオプションは、これから核廃棄しようとする国に対して、条約加盟の決定を下してからすぐに条約に加盟し、定められた時間内に軍縮を完了させる機会を与える。しかし、廃棄の検証の面からみれば難題を抱える。核兵器に関して拡散上機微な情報を保護する方策を探らねばならないからだ。本稿は、この核兵器廃棄プロセスにおいて、機微な情報へのアクセスを要求することなく行うことができる検証実務について提示するものである。このことは、核兵器とすべての廃棄関連活動を、廃棄国の核複合施設の特定の敷地内に封じ込めることによって可能となる。このプロセスの冒頭で廃棄国が提示する唯一の情報は、この敷地に置かれる核分裂性物質の総量だけである。兵器の廃棄は、公開された形でこの敷地内から撤去された核分裂性物質を計量管理することで検証されることになる。

  • 核兵器禁止条約の体制はいかにして維持されるのか?

    リチャード・レネイン、リチャード・モイエス

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    要約

     大量破壊兵器関連条約とその他の人道的軍縮条約履行の経験は、核兵器禁止条約(TPNW)の体制は、かりにどの核保有国も条約に加盟していなかったとしても、核兵器に反対する世界的な規範を構築し維持することによって効果的なものになりうることを示している。条約の中核的な人道主義的目的に焦点を当てた行動的かつ多様な実務家コミュニティの発展や、積極的義務の実践的履行、広範な国際社会との統合・コミュニケーション、グローバルな核不拡散体制のさらなる強化が、TPNW体制成功の鍵を握っている。

  • 核兵器禁止条約の普遍化:課題と機会

    ニック・リッチー、アレクサンダー・クメント大使

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    要約

     核兵器禁止条約(TPNW)は、核軍縮運動の歴史における画期を成す協定である。それは、核保有国やその多くの支持者たちの願いに反して合意されたものであり、この文脈が、条約普遍化に向けた課題と機会の条件となっている。我々は本稿で、条約の普遍化は、条約の権威やその中核的規範・原則を最大化する戦略として理解されねばならないと論じる。その対象となるのは、軍縮主唱国、多数の非核保有国、核兵器依存国、核保有国の4つのカテゴリーの国々である。我々は、これらの規範や原則が、とりわけ非核保有国にとっては既存の規範や原則の延長に過ぎないことを示すが、こうしたつながりを作りだすには、対象を絞った継続的な政治的取り組みを要する。我々は、市民社会と協働している条約加盟国は、条約を支持し、その批判者のナラティブに対抗する規範的議論をもって、非核保有国に関与する必要があると論じる。このことは、他の条約の普遍化の取り組みを基礎とした幅広いアウトリーチ活動を通じてなしうるものであり、我々はそのことを本稿で詳しく論じる。核兵器依存国や核保有国に働きかけることはより難しく、言説的な空間を押し広げるまた別のアプローチを要することになろう。その中で、人道・倫理・リスクに関連したTPNWの存在意義が問われることになる。政治的な反対論は非常に大きなものになろうが、TPNWの目的は核保有国の核兵器政策に影響を与えることにある。普遍化戦略を通じて条約の規範や原則の権威を強化することは、このことにとって本質的なのである。

  • 核兵器禁止条約の履行:将来に向けた希望と期待

    アリシア・サンダース=ザクレ、ベアトリス・フィン

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    要約

     核兵器禁止条約が2021年1月22日に発効した。今後数年でどんな展開になるだろうか? 最初の数年で、加盟国が条約の積極的な義務を履行し始め、条約非加盟の国々の中の主体が、条約の設定した新しい規範に従いはじめるだろう。10年以内には、核保有国を含めた非加盟国からのさらなる関与が期待される。こうした国々の核兵器政策の変化が条約の理念により近づくことになる。時間が経てば、規範が成長し、条約がより普遍化して、条約非加盟国が署名・批准することが期待される。

  • 「核のタブー」の今後:核兵器禁止条約のインパクトを枠づける

    マグナス・ロボルド

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    要約

     核兵器禁止条約(TPNW)は、いかにして核兵器の使用防止に資するだろうか? TPNWが2017年に採択されて以来、核軍縮に同条約が与える効果について多くの議論がなされてきた。しかし、国際人道法を基礎とした同条約の核兵器使用禁止条項を、核兵器使用に対抗する長期的な規範をさらに強化するにあたっていかに利用しうるかについては、あまり関心を持たれていない。本稿は、TPNWの第1回締約国会議をどのように作っていけば同条約の核兵器使用禁止規定への注目につながるかについて論じる。

  • 核兵器と敵対的政治:核兵器廃絶の「コンセンサス」を打ち破る

    ヒューブ・エゲランド

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    要約

     核兵器禁止条約は、核廃絶という大きな目標の追求をいかにして可能にするのか? 条約批判派は、この新しい協定は核兵器国と非核兵器国との間の分断を深め、コンセンサスを損ない、核兵器の削減・廃絶に向けた既存の取り組みを妨害するものだと論じる。このコメンタリーで筆者は、核兵器禁止条約の主な強みと貢献のひとつは、実際には存在していない「核兵器廃絶というコンセンサス」に穴を穿ち、敵対的な政治への余地を生みだし、核の秩序と安全に関する新たな発想を前進させる点にあると論じる。

  • その他
  • 宇宙空間での戦争と近接作戦:核の指揮・統制・通信と戦略的安定性に与える影響

    シトキ・エゲーリ

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    要約

     地球の軌道上にある衛星は、核保有国の核の指揮・統制・通信(NC3)インフラを支える重要な役割を果たしている。しかし、妨害を受けずにこれらの衛星が機能するという強い自信の基盤は弱く、危険ですらある。国家や非国家主体は、最初の衛星を軌道上に置いて以来、衛星にいかに損害を与えるか、あるいは、いかにその機能を阻害し弱めるかを一貫して追求してきた。そうした破壊や妨害を達成するオプションの中に、その他の衛星や、それ自体宇宙空間に置かれている宇宙船によって遂行されるキネティック攻撃あるいは非キネティック攻撃がある。いわゆる近接作戦における最近の技術進歩によって、そうした宇宙空間内での活動は以前よりも実現の可能性が高くなり、効果的かつ魅力的になった。マイナス面としては、宇宙空間内での活動を現実に効率的に行うには、重大な制約や不確定要素があるということだ。対衛星攻撃に際して宇宙空間内の活動の潜在能力や魅力を強化しようとすれば、宇宙状況把握には限界がもたらされ、宇宙空間内での侵攻を即時かつ誤りなく探知し確定する際に困難に直面することとなる。宇宙空間内での活動がこのように危険かつ安定を損なう性格をもっている限り、NC3の一貫性を保とうとする核保有国の努力はより複雑なものとなる可能性がある。それが戦略的安定性に対してもつマイナスの影響は深刻で、壊滅的な帰結をもたらす危険もある。

  • グローバルな核(バックアップ)ホットライン:核の指揮・管制(NC2)を横断するコミュニケーション規範を構築するには

    サルマ・シャヒーン

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    要約

     これまで核兵器国は、グローバルな安全を向上させ、核の脅威の役割を低減する世界の安全保障枠組みの構築に失敗してきた。9つの核兵器国すべてが、核兵器の多様化と精緻化、早期展開能力と残存可能性の向上を目的とした核兵器開発と近代化を進めてきた。これによって、敵対する核兵器国間における危機が急速にエスカレートする可能性が高まり、国際社会全体の安全を脅威にさらしている。こうした核兵器の開発・近代化の中で、危機における敵対国間の意思疎通手段の不在が重要となっている。なぜなら、このために世界が核戦争に急速に近づいてしまう可能性が高まるからだ。危機における核保有国間の意思疎通の構築と維持の重要性は論を俟たない。したがって、合意された標準手続に従った大国の核関連司令官の間のバックアップ・ホットラインを通じた情報のやり取りが、核のリスクを低減することにつながるかもしれない。このホットラインは、核の司令官や国家指導者らが次のような準備を進めることを可能とする。①危機が起きる前からホットラインの合意された標準手続を実行することで、こうした意思疎通のラインを国内の政治的圧力から遠ざけておく。②仮に政治的意思が不十分だとしても、核保有国間、そして国際システム全体において信頼を構築する。③核のホットラインに関する詳細の詰めから、核の指揮・管制システム全体をカバーするあらたな規範の構築の必要性にいたる議論を、核保有国間で拡大する道を開く。

  • ステルス/スペクタクル:アジアの核の海をめぐる言説の波

    ラミンダー・カウール

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    要約

     核実験のもたらした爆発的な反応に比べれば、核の潜水艦は、近隣の敵対国に対する来たるべき勝利をめぐる比較的静かなファンタジーといったものになっている。そうした政治的表現は、これまでは潜水艦について言及してこなかったインドの大衆文化の中に刻印されている。潜水艦に関する映画やデジタルメディアでの表現は、秘密性と公開性の襞の中で見え隠れするという難題を抱えている。かたや、秘密のベールに隠して水中での隠密行動を続けねばならない必要性があり、かたや、核兵器を搭載した原子力潜水艦の反撃能力によって可能となった技術的進展と政治的態勢を美化したいという抑えがたい欲望がある。本稿は、ステルス性とスペクタクル性という互いに緊張関係にある誘惑に焦点を当てつつ、潜水艦がインドの映像メディアやデジタルメディアにおいていかなる刻印を残しているか、さらに、より広い文脈において、潜水艦の問題がどのような感情的反響を引き起こしているのかを検討する。それがもたらす覇権的なダイナミズムを理解することによって、アジア地域と、それに近接する海の幹線(ここではアジアの「海の風景」[seascape]と呼ぶ)で続いている核武装化に関する問題を提示するきっかけとすることができよう。

  • 核不拡散条約:古い問題と新しい問題

    トーマス・グラハム大使

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    要約

     本論文は、元々は2020年に予定されていたNPT再検討会議の現在の不安定な状況について論じるものである。会議が今後開かれた場合に検討されるであろう3つの主要な課題は、①CTBTが長らく未発効状態にあること、②中東非大量破壊兵器地帯について即時に交渉する国際会議につながる進展がみられないこと(これが原因で2015年再検討会議の破談がもたらされた)、③2021年1月に発効した核兵器禁止条約の再検討会議がNPTにもたらす効果、である。2020年のNPT再検討会議は、今のところ、2021年8月に予定されている。したがって、どの問題がこの会議において重視されることになるのかは、不確定である。会議がいつ開かれることになろうとも、重大な問題が立ちふさがることになろう。NPTは長年にわたって弱体化してきた。すなわち、強まる気候変動の脅威によって危機にさらされてきたのである。国際安全保障の中核を成すNPTを強化し、気候変動の脅威に対してその存在感を高める機会を最大化しつづけることが、きわめて重要だ。強力かつ積極的な再検討会議が、この目標の達成に資することになろう。

  • 書評
  • 書評:ランディ・ライデル、ネルニ・ティレケラトネ『スリランカの息子:グローバル外交官ジャヤンタ・ダナパラ著作・発言集』(スリランカ・ユナイツ、2019年)

    ポール・メイヤー

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