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第4巻2号(2021年12月発行)

  • バイデン政権による核態勢見直し:アジアの同盟国・パートナーへのその影響
  • 序文:特集「バイデン政権による核態勢見直し」に寄せて

    阿部信泰

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    要約

     米バイデン政権は現在、核態勢見直し(NPR)を進めており、その報告書は2022年初頭に出されるものと見られる。特集「バイデン政権による核態勢見直し」へのこの序文で、ゲストエディターの阿部信泰が3本の論文を概観する。

  • 軍備管理対話こそが日本の利益:あらたな核態勢見直しに向けたアジェンダ

    秋山信将

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    要約

     バイデン政権による核態勢見直し(NPR)論議の中で、日本でもっとも注目を集めている問題は、核先制不使用(あるいは「唯一の目的」)に関する宣言的政策が採択されるかどうかという点である。核軍縮を促進する方法としてこうした宣言的政策を採るべきだとの強力な議論がある。しかし、そうした宣言的政策を今回採択しても、北東アジアにおける軍縮にはつながらないだろう。それは、この地域における安全保障環境が大きく変容しているからである。米中間の中距離ミサイル戦力の差のような戦力の不均衡や、核・通常戦力・サイバー・宇宙の領域がからみあって構築される抑止力の追求、戦略的安定性の態様に影響を与える新たな技術の登場は、抑止と軍備管理に大きな影響を与えることだろう。日本は日米同盟の枠組みの中で抑止の信頼性を確実にする方向に進んでいる。そうした状況の下、核のリスクと脅威を低減する宣言的政策に焦点を当てるよりも、危機管理と、たとえば新技術の影響といった共通の関心事を協議する多層からなるメカニズムの構築に向けて、地域安全保障の利害関係者の間に意思疎通メカニズムを確立することの方が重要である。リスク管理と戦略的対話に向けたこうしたメカニズムを通じた信頼構築は、核軍縮を高める方向で機能する宣言的政策を採用する基礎を提供することになるだろう。

  • 日米同盟の核抑止戦略は失敗しているが修復可能

    グレゴリー・カラーキー

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    要約

     中国との紛争において核兵器を先制使用すると威嚇している日米同盟の現在の核抑止戦略は、信頼性に欠け、逆効果である。威嚇よりも外交を基礎にしたあらたな戦略が必要だ。残念ながら、日米同盟に時は味方していない。中国は、米国が2つの重要な国際軍備管理協定を前進させるのを、この25年間待ってきた。中国の外交官は、包括的核実験禁止条約を批准し、核分裂性物質生産禁止条約についての協議を行う意思はあると語る。しかし、中国軍は、もしさらに進行してしまったならば止めることが難しくなるような核戦力強化の追求を進めているようだ。この拡張の背景に、日米同盟に対して、その現在の抑止戦略はけっして成功することはないとのメッセージを送る意図があるとすれば、核軍備管理外交を復活させることが、中国の日本に対する核攻撃のリスクを低減する唯一の道だということになる。

  • バイデン政権による核態勢見直しとアジア太平洋の同盟国へのその影響

    阿部信泰

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    要約

     米国のジョー・バイデン大統領は、まもなく核態勢見直しを発表する。米国の軍事戦略における核兵器の役割低減を政策目標として盛り込むことになるかもしれない。この状況の下、米国の核抑止力の近代化に取り組むことになる。核の三本柱の地上発射部分がいくらか削減されたが、米国は、核抑止能力が全体として維持されていると見なされる限り、同盟国に不安感を与えずに済むだろう。米軍事ドクトリン全体における核兵器の役割の低減は、歓迎されるべきことだ。その意味で、核先制不使用(あるいは「唯一の目的」政策)もまた歓迎されるべきことだ。もっとも、日本の当局がそれに反対することになるかもしれない。安全保障環境が全体として改善しない限り、核兵器の役割を低減するには、通常戦力の抑止力を強化することが必要になる。しかしこの点は日本ではよく理解されていない。こうした移行は、この数十年は低成長に悩み、防衛予算が国内総生産の1%枠に抑えられている日本においては、簡単ではないだろう。日本では支持が高い核兵器禁止条約に対する米国の立場も日本では注目されることになろう。

  • その他
  • CTBT未発効状態での核実験検証の実効性強化

    佐藤真央

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    要約

     広島・長崎で原子爆弾が爆発してから76年、世界は軍備管理の枠組みに対する挑戦に直面しつづけている。これは、多国間主義の停滞というより広い問題の一部を成している。核軍縮の機構を再発明すべき必要性が高まっている。包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効に関して、現在の政治的ゆきづまりを打開することはおおよそ困難に思われるが、科学の力が信頼醸成措置への独自の道筋を生み出し、核兵器国と非核兵器国双方の必要に奉仕している。本稿は、CTBTが未発効である現状を、その検証体制の即時の実行という問題から切り離すことによって、軍備管理検証のためのツールとしての科学の価値を再検討するものである。核実験禁止の監視体制が前進しているかどうかは、CTBT附属書IIの国々の条約批准状況に関わりなく、科学的な指標によって測ることが可能だ。CTBTはすでに、既存の構造によって、核実験を監視するというその中核的な機能をすでに果たしている。包括的核実験禁止条約機構準備委員会は、信頼醸成措置の主体や、検証体制の民生・科学的適用の発展の主体、条約の理念に賛同する国々を糾合する能力開発の主体として前進している。そのことによってCTBTは、核実験のモラトリアムを維持しているのである。

  • 軍縮・インド洋・戦略的外部性:スリランカの事例から

    サネイス・デシルバ

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    要約

     インド洋に囲まれた南アジアは、核保有国のグローバルな戦略的勢力争いの格好の場となっている。南アジアの非核兵器国は、この地域で起こっている急速な核戦力強化を座して見ているわけにはいかない。なぜならそれが自らの安全にも影響を与えるからだ。奇妙なことに、それが与える安全保障上の影響は、さまざまな理由から軽視され、まともに把握されたことがない。この状況の下、筆者は、核によって不安定な地域に変容しつつある南アジアにおいてスリランカが軍縮に果たしてきた役割について説明を試みる。また、軍縮の原因は「核クラブ」の国々だけが取り扱えばよいとする通念に対して疑問を投げかける。本稿の目的は、スリランカがこれまでグローバルな軍縮に果たしてきた役割と、生まれつつある核の影の下でスリランカが直面している第三者による安全保障上の懸念の効果について論じることである。

  • ジュネーブ軍縮会議に未来はあるか?

    ポール・メイヤー

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    要約

     ジュネーブ軍縮会議(CD)はかなり長い間、麻痺状態にある。包括的核実験禁止条約(CTBT)に関する協議が1996年に行われて以来、いかなる協定をも生みだしたことはなく、作業計画に合意したことすらない。CDの機能不全は、意思決定にかかる極端な全会一致原則と、譲歩によって生まれるかもしれない集合的な利益よりも国益を重視する65カ国の加盟国の中での非生産的なダイナミズムのゆえである。CDの破産、それに、外交的な見かけを取り繕おうとする加盟国の自己満足は、この多国間の軍縮取り組みの信頼性を失わせている。CDからその中心的なテーマを取り出して、事実上の「拒否権」にさらされることのない協議枠組みに持ち込むことで、進展をもたらすことを真に望んでいる国々にとっての脱出ルートが切り拓かれるだろう。CDを拘束するものから抜け出すために創造的な外交に踏み出す政治的意志を持たない限り、この国連「唯一の多国間軍縮協議フォーラム」の将来は悲惨なものになるだろう。

  • 中東非核・非大量破壊兵器地帯創設に向けた義務の確立

    ジア・ミアン

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    要約

     2019年の国連総会は初めて、「核兵器とその他の大量破壊兵器(WMD)のない法的拘束力のある地帯を中東に創設することの協議を目的とした」年次会合を開催した。このプロセスでは、この切望されている条約と地帯に盛り込まれるべき核兵器に関連した中核的な義務とは何かが検討される必要がある。本稿で示唆する措置は、核不拡散条約や包括的核実験禁止条約、アフリカ非核兵器地帯条約、核兵器禁止条約など、中東の多くの国々がすでに受け入れているか、あるいは支持することを表明している条約を基礎とし、それを補強するものである。本稿はまた、2015年の共同包括的行動計画に盛り込まれている一般原則と時限付きの措置の一部が、中東非核・非WMD兵器地帯の安定化に向けた信頼構築に資すると論じる。地帯の中核的な目的が核拡散リスクに対する地域の安定性強化にあるとすれば、原子力計画を廃止することで永続的な利益が得られるだろう。

  • 二国間軍備管理を通じた核軍縮の促進:新START延長は軍縮への道を切り開くか?

    エイミー・F・ウルフ

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    要約

     米国とロシアは2021年2月、新STARTの延長に合意した。多くの専門家が、これによって米ロ間の軍備管理プロセスに弾みがつき、核兵器の大幅削減につながり、おそらくは核軍縮への道が切り拓かれるだろうとみている。しかし、米ロ両国は、次のラウンドの軍備管理協議において協議テーマに合意することができず、核兵器の大幅削減を受け入れることがないかもしれない。国際安全保障環境の変容、米ロ関係の緊張、中国核戦力の規模と範囲の拡大が、進展の妨げになるかもしれない。結果として、軍備管理の次のステップは、透明性向上、コミュニケーション、規範、リスク削減措置といったものに焦点を当てることになるかもしれない。これらはいずれも、核戦争のリスクを軽減し、将来的な核戦力削減に必要な環境を作りだすものだからだ。

  • 抑止と軍備管理:ロバート・ガルーチへのインタビュー

    シャロン・スクワッソーニ

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    要約

     ロバート・ガルーチ大使は、ジョージタウン大学エドマンド・A・ウォルシュ外交大学校の外交学教授であり、以前は学部長も務めたことがある。2009年から14年までは、「ジョン・D&キャサリン・T・マッカーサー財団」の会長も務めた。米国務省での外交官としてのキャリアは21年に及び、弾道ミサイルや大量破壊兵器拡散の脅威に対処する特別大使や、イラクの軍縮を監視する国連特別委員会(UNSCOM)の副議長、米国務長官補(政治軍事問題担当)を歴任した。北朝鮮と1994年に米朝枠組み合意を協議した際に米側の外交チームを率いた。このインタビューでガルーチ大使は、核抑止と軍備管理、ミサイル防衛の連関についての見解を披露し、あらたな技術的能力が抑止の計算を変える可能性について示唆している。インタビューは2021年11月5日に行われ、『平和と核軍縮』誌掲載のために編集された。

  • 書評
  • 書評:スティーブン・J・シンバラ著『米国・ロシア・核の平和』

    タウシーフ・アフマド・ミール

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