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 シーボルトの植物学 

 

▲キリ Paulownia tomentosa (Thunb.) Steud.

▲アジサイ Hydrangea otakusa(現学名は異なる)

▲ガクアジサイ Hydrangea azisai(現学名は異なる)


 シーボルトPhilipp Franz B.von Sieboldは日本の薬草をヨーロッパに紹介した。日本の植物はバタビヤのバイテンゾルフ植物園に送られ、次いでオランダの植物園で馴化され、ヨ−ロッパの園芸用の植物として定着していった。シ−ボルトは帰国後日本から持ち帰った膨大な植物標本と川原慶賀に描かせた植物絵を用いて植物学者のJ. G. Zuccariniとの共著でFlora Japonica 『日本植物誌』を完成させた。

 シーボルトは本草学者の水谷助六、その弟子伊藤圭介そして宇田川榕庵と密接な交流を持っていた。伊藤圭介にはツュンベリ−の Flora Japonicaを、宇田川榕庵にはスプレンゲルの植物学入門を与えた。これらを元に圭介は『泰西本草名疏』を、榕庵は『植学啓原』を著した。これらの出版により本草学から脱皮した日本の植物学が始まった。

 西日本の植物の学名を調べるとSiebold とZuccariniの連名による命名が多いのに驚かされる。シーボルトはユキヤナギの種名にSpiraea thunbergii Siebと尊敬するツュンベリ−の名を献じている。パトロンのロシアのアン パウロニア大公妃には太閤秀吉が五三の桐であることからキリ属をPauwlonia属と命名、オ−ストリアのメッテルニヒ宰相にはツクシシャクナゲにRhododendron metternichii Sieb.et Zucc.と種名を献じている。日本名をそのまま種名に用いた植物としてウメPrunus mume Sieb. et Zucc.、ハマボウ Hibiscus hamabo Sieb.et Zucc. がある。キブシ  Stachyurus praecox Sieb.et Zucc.とトサミズキCorylopsis spicata Sieb.et Zucc.は属名と種名ともにSieb.et Zucc.が命名している。

▲お滝さん 〜NIPPON所収〜

 愛するお滝さん(其扇Sonogi)に捧げようとした植物の種名については、情に厚いシ−ボルトは科学者としての立場を逸脱しがちであった。アジサイは長崎でオタキサン花と呼ばれ市花でもある。シ−ボルトは美しいアジサイにHyrangea otakusa、地味なガクアジサイにHydrangea azisaiと命名した。牧野富太郎博士は混乱を招くこの命名に憤懣があった。アジサイの現在の学名はHydrangea macrophylla (Thunb.) Seringe f.macropphyllaであり、ガクアジサイの一変種と考えられている。もう一つはクロウメモドキ属のイソノキにRhamnus Sono(o)gi Sieb.と一時期命名したことがある。イソノキをソノギと呼ぶのは無理がある。後に正式にRhamnus crenatus Sieb.et Zucc.と命名された。同じクロウメモドキ属の新種を牧野富太郎が鳴滝で見つけ、Rhamnus sieboldiana Makino と命名した。鳴滝にあるシーボルトノキである(初代は枯れて二代目)。しかしその後中国のRahmnus utilis Decne  と同一である事がわかった。おそらくシーボルトが二度目に来崎した折、薬木のこの木を中国から取り寄せ鳴滝に植えたのであろう。Rhamnus属の種名でもシーボルトと其扇は縁がなく二人の名は残らなかった。

▲鳴滝にあった初代シーボルトノキの原木
(長崎大学附属図書館医学分館所蔵)

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